山形県長井市など日本の4市がアフリカ諸国の「ホームタウン」に認定され、海外でも報道されたことをきっかけに「日本は山形県長井市をタンザニアに与える」「アフリカからの移民を日本に定住させるための特別ビザ制度を創設」などの情報が拡散しましたが、誤りです。「ホームタウン」認定は、交流強化を目指すものですが、特別にビザを発行したり、日本の土地や権利を譲渡したりするものではありません。
検証対象:引用元
https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/diversity/false-hometown-africa-nagai-visa
こちらにある通り
「山形県長井市がタンザニアの国の一部になると誤解を与えるような記載や、移民の受け入れ促進、日本と当該諸国との往来のための特別な査証の発給等の記載」
に関しては誤りである。
The Tanzania Times紙にあった、すでに訂正済みの「dedicate」という表現は和訳した際に誤解を得やすい単語である。
「特別ビザ創設」を判断するのは日本国政府であり、日本国政府が否定している以上は相手国の誤解であり事実とは言えないだろう。事実、ナイジェリア政府は公式サイトでホームタウン認定に関して「日本政府がナイジェリアの若者のために特別なビザを作る」という表現のあったwebページを削除した。
このたび話題になった「ホームタウン」制度に関しては誤解に基づく情報が広まっていることは事実である。
検証
しかしながら、一般国民が懸念しているのはそのような文章の表現をなぞるような些事ではない。
なぜこのような「誤解」が広まってしまっていたのか。政府や行政、その関係者は、その背景について、意図的であるのか否かにかかわらず無視しているように見えてしまっていることも原因なのではないか。
筆者は外国人技能実習生受け入れのための法規や実態について、技能実習生責任者講習にて一通りは把握している。実は日本の移民政策は世界的に見れば厳格な部類なのである。
大多数の外国人技能実習生は労働者が慢性的に不足する日本で真面目に働いて社会を支え、母国よりも良いレートでお金を稼ぎ、慎ましく生活をしている。ごく一部の不届者たちが「外国人」ということでどうしても目立ってしまうのだ。
そういう実態はあるのだが「外国人が増えると治安や文化が変わる」という漠然とした不安感に政治も司法も行政サービスも寄り添えていない。不安の表明を行うと「問題ない」、問題提起を行うと「排外主義」「差別主義者」というレッテルを貼られてしまう。
それによって解消されない不安は増幅し「政府は移民を使って日本を破壊するのでは」という政治不信が芽生えてしまっており、政府の公式見解でさえも信じられない状況になってしまっている。
JICAはタンザニア・ガーナに対して外国人材受入のための事業を行なっている
さて、ここでJICAの公式文書であるコンサルタント等契約(業務実施)を見てみよう。
https://www.jica.go.jp/about/announce/program/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/12/25/20241225g.pdf
22ページ「アフリカ地域(広域)日本国内の地方との連携を通じた外国人材受入・人材育成にかかる基礎情報収集・確認調査(QCBS-ランプサム型)」

に以下の記述がある。
・パイロット派遣事業の実施支援(タンザニアから長井市へ研修生受入)
・パイロット派遣事業の実施支援(ガーナから三条市への対象人材受入)
パイロットには水先人の意味があり、試験的に先行して行う事を「パイロット~」と呼ぶ事がある。
将来的なアフリカの人材受け入れのために試験的にタンザニア・ガーナからの人材受け入れを行うということを、JICAは自身の文書内において認めているのである。
判定
本当に全てが文化交流の促進を目指す取り組みであるのならばここまで大きな問題とはならなかっただろう。
陰でコソコソとまるで悪事を進めるかの如く、事実を都合よく切り取り「デマ」であると切り捨てる態度によって国民の不信が高まり、不安が広がるのは当然である。
しかも結果として完全なる「デマ」ではなく、人材受け入れを目指していることは事実である。その事実についてプレスリリースや記者会見において一切触れず、真剣な懸念を無視した対応は著しく問題があると断じざるを得ない。
確かにSNS等で指摘されている「日本は山形県長井市をタンザニアに与える」「アフリカからの移民を日本に定住させるための特別ビザ制度を創設」点においては誤りであった。
しかしながら、JICAの公式文書において「パイロット派遣事業の実施支援」という事業を行なっていることを発表している。
これは将来的なアフリカの人材受入を目指して行なっている事業である。年間1万人以上が失踪する技能実習生の現状を鑑みると、アフリカからの人材受け入れが進めば日本国内に不法に滞在する「移民」が増える事は間違いない。SNSにおける「移民が流入」という不安については的を得ているのである。
よって、全てが誤りとは言い切れないと判定した。
出典・参考
https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/diversity/false-hometown-africa-nagai-visa
https://www.jica.go.jp/about/announce/program/detail/__icsFiles/afieldfile/2024/12/25/20241225g.pdf
JICAアフリカ・ホームタウン」に関する報道について
https://www.jica.go.jp/english/information/notice/2025/1572980_66428.html
「JICAアフリカ・ホームタウン」に関するナイジェリア連邦共和国大統領府プレスリリース及びタンザニア現地紙記事の訂正について
https://www.jica.go.jp/information/notice/2025/1573062_66416.html
